亡き妻の骨壺を抱え、死に場所を探し、彷徨う男がいた。
古き時代の佇まいを残す、熊本豊前街道の温泉町「山鹿(やまが)」で、
男は祭りのポスターに描かれた「灯籠娘」に、妻・ゆかりの面影を見る。
元・美術教師の男・市井祐介(49)は、灯籠師見習い・直樹(30)に誘われるまま働き始めるが、
一年が経ち、妻の三回忌を迎えても、深い喪失と孤独は拭えない。
町を出ようと決めた、祭りの日。
突然、ゆかりの双子の妹だという、あかりが現れる。
「あなたにお願いがあって」
千人灯籠を踊るために、スペインからやってきたというあかり。
彼女の目的とは―――。
人は、ひとりでは生きられません。
「世捨て人」と自称する人も、ひきこもりの人も、
他者との関わりを一切、捨てることはできません。
生きることに興味がなくとも、
死んだも同然、であっても、日々の生活は続きます。
不意に訪ねてくる人もあれば、隣人にごみ捨てを注意されたり、
すれ違いざまに、「おはよう」と笑顔を向けられたり。
見出すための「きっかけ」「力」「原動力」は、
自分ではないほかの誰かから得られるもの。
いまそこにある何気ない風景によって、育まれるものではないでしょうか。
映画『骨なし灯籠』のテーマは、「共生」です。
「他者との会話」「環境との共存」を問う映画です。
ほんとうはどう生きたいか、ほんとうの自分は何か。
明確な答えはでなくとも、きのうとは少し違った明日を迎える―――
この映画を観終わったとき、あなたの心に、
小さくとも温かい「灯(ひ)」が、灯(とも)ることを願います。
脚本・監督木庭撫子
1972年1月17日生まれ、愛知県豊田市出身。脚本家・倉本聰が俳優とライターを育成した、富良野塾10期生。倉本作品を中心に、舞台、テレビドラマなどで活躍。存在感のある演技には定評があり、富良野塾の先輩でもある撫子監督は「首から骨壺を提げて歩く主人公を思い描いたとき、水津の姿が浮かんだ」という。今作で映画初主演。繊細な灯籠づくりのシーンでは実際の灯籠師から手ほどきを受け、美大卒の経歴を生かしたリアリティのある演技を披露している。<主な作品>【舞台】 『谷は眠っていた』『走る』『歸國』(富良野GROUP)『カウラの班長会議』(燐光群)【ドラマ】『玩具の神様』(1999/NHK)『北の国から~遺言』(2002/フジ)『やすらぎの刻~道』(2019) 【映画】『カムイのうた』(菅原浩志監督)2023秋公開予定。『海の沈黙』(若松節朗監督/倉本聰脚本)2024年公開予定。
1974年10月13日生まれ、高知県高知市出身。NHK朝の連続テレビ小説『オードリー』(2000)でデビュー。同じ頃、撫子監督が浅野有生子として脚本を手掛けた『陰の季節』にも準レギュラーの婦警役で出演。以降、数々のテレビドラマや映画などで活躍。大杉漣主演の映画『棚の隅』(2006/門井肇監督、浅野有生子脚本)ではヒロインを演じた。今作では、主人公の亡き妻ゆかりと自由奔放なあかり、一人二役に挑戦。金灯籠を頭に載せた姿は「想像以上だった」と監督が驚くほど、鶴田一郎氏の描く美人画(灯籠娘)に似ており、儚い美しさを体現している。<主な作品>【映画】「ストロベリーナイト」(2013/佐藤祐市監督)「謝罪の王様」(2013/水田伸生監督) 「CODE-D 魔女たちの消えた家」(2022/古本恭一監督)【ドラマ】『陰の季節』(2000-2004/TBS 浅野有生子脚本) 『相棒 season 9』第13話(2012/テレビ朝日)『妖怪シェアハウス』(2022/テレビ朝日)【広告】2023年現在、CM3社展開中( JAタウン「JAタウンの食卓」篇) 、婦人画報のお取り寄せ「幸せの三人」篇、レイクALSA「ハッピーバースデー」篇)
1989年3月3日生まれ、熊本県山鹿市出身。野球少年が地元で就職後、初めて観たシェイクスピアの演劇に魅せられ、23歳で上京。文学座附属演劇研究所で学び、現在、劇団男魂(メンソウル)劇団員として舞台を中心に、ドラマ、映画など活躍の場を広げている。直樹役は「高山陽平という役者に出会って生まれた」と撫子監督。生まれ育った故郷・山鹿を舞台にした今作で、地元の青年を好演している。 <主な作品>【舞台】劇団男魂(メンソウル)『親父の記憶』『鼓動』『バカデカ-勿忘草』 『バカデカ-桔梗』 『髭王』(※主演) 【ドラマ】『シャーロック』(2019/フジテレビ)連続テレビ小説 『エール』(2020 /NHK)『BG~身辺警護人~』(2020/テレビ朝日)『刑事 7 人』(2020/テレビ朝日)ドラマL 『年下彼氏』(2020/朝日放送) 『しずかちゃんとパパ』(2022/NHK BS) 『【映画】『ピストルライターの撃ち方』(2023/眞田康平監督)※6月より公開中
1968年4月23日生まれ、秋田県秋田市出身。富良野塾5期生。今作では灯籠師を演じるにあたり、撮影の二か月前から、監修の坂本ゆかり灯籠師にレクチャーを受けた。「役への真摯な姿勢が、画面から滲み出る演技だった」と信頼を寄せる撫子監督とは、富良野塾時代の同期。在塾生だった20歳のとき、倉本聰が富良野塾草創期を描いた作品『谷は眠っていた』で初舞台。『今日、悲別で』(富良野塾)ではニューヨーク、カナダ公演にも参加した。 2002年から演劇ユニット「ミノタケプラン」を作・演出の石井信之(富良野塾1期生)と共同主宰。主演する傍ら、プロデュース、制作も担当している。持ち前の歌唱力で ミュージカルにも多数出演。近年では俳優業にとどまらず、ライブではそのハスキーで力強い歌声を披露。シンガーソングライターとしての顔も持つ。<主な作品>【ドラマ】『火の用心』(1990/日本テレビ/倉本聰脚本)『黙秘』(2006/TBS)『クローバー』(2012/テレビ東京)『ファースト・ステップ2~』(2023/BSよしもと)
1967年10月10日生まれ、北海道倶知安町出身。青山学院大学卒。富良野塾7期生。2000年より主宰する演劇集団『セメント金魚』では俳優として出演しながら、作・演出も手掛ける。独特なコメディセンスで笑って泣かせる芝居には定評があり、ファンも多い。今作で物語のカギとなる男を「にしやうちをイメージして当て書きした」という撫子監督。「相手の心に興味本位で踏み込んでも、なぜか許される稀有な役者だから」。<主な作品>【ドラマ】『恋愛キャリア活用会社』(1997/NHK/石井信之脚本)『新・南部大吉交番日記』(2000/NHK)、『事故専務』(2011/山梨放送/浅野有生子脚本)【映画】『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007/三池崇史監督)『いのちのコール~ミセスインガを知ってますか』(2014/蛯原やすゆき監督)『受け入れて』(2020/貴田明日香監督)
1981年12月16日生まれ、熊本県山鹿市出身。鹿本高校卒。時代劇のテーマパークを経て、27歳のときにキヤノンのCMでデビュー。2014年8月に演劇ユニット翠座(あきらざ)を旗揚げし、出演だけでなく、作・演出も担当している。ときには殺陣も披露するスペクタクルな舞台は、熱烈なファンも多い。南京玉簾芸人・すえきちとしての顔も持つ。初対面で「年齢不詳な妖しい魅力」が印象に残った撫子監督は、東京で紹介された時点ではすでに脚本を仕上げていたが、大幅に書き直し、今作の「れい」が誕生した。<主な作品>【テレビ】『刑事吉永誠一 涙の事件簿』9話(2013/テレビ東京)『相棒17』18話(2019/テレビ朝日)【映画】『白ゆき姫殺人事件』(2014/中村義洋監督)
1991年9月21日生まれ、熊本県山鹿市出身・在住。大学時代に、中国・天津に短期留学した経験を持つ。2014年から3年間、RKKラジオでキャスターを務め、その後フリーに。持ち前の明るさと可愛らしさで、熊本を拠点にテレビ・ラジオ・CMなどで活躍する、人気タレントである。今作で、映画初出演。灯籠師見習い・直樹の妻役を好演した。撫子監督も「とくに子役とのやりとりがお母さん役として自然で、温かい雰囲気を醸し出してくれた」と話す。実生活では2児の母という彼女の、バラエティ番組では見られない、母の顔にも注目してほしい。<主な経歴>平成30年度宝くじ幸運の女神(2018)、ミス日本酒・熊本(2019)【テレビ】『水曜だけど土曜の番組』(2017~RKK)【ラジオ】『トラパラ』(2019~RKK)
熊本県八代市出身。演劇に目覚めたのは小学生の頃。自分で台本を書き、演じる楽しさを知った。高校卒業後、地元の銀行に就職。親友を事故で亡くしたことをきっかけに、夢を諦めず「生き直す」ことを決意。以来、演劇を軸にした人生を歩み、その半生をモチーフに描いた一人芝居では作・演出も手掛けている。これを観た撫子監督が「ぜひこの映画に」と出演をオファー。夫を亡くし、懸命に息子の直樹を育てた母・不二子を演じた。東京では演劇倶楽部『座』に所属。 現在は、熊本を拠点に活動。朗読や演技の講師も務める。朗読ユニット『ことはのね』代表。山鹿灯籠祭りでは千人灯籠の司会を担当中。<近年の主な活動>大人のための絵本朗読会(主催 /2015~)終戦記念日朗読会「祈希」(主催・出演/2016~毎年8月)FM791「ゆるるアフタヌーン」パーソナリティ
1962年4月10日生まれ、福井県敦賀市出身。富良野塾5期生。 在塾中から『谷は眠っていた』『今日、悲別で』など、倉本聰の舞台作品に出演。撫子監督、友恵役のたむらもとことは同期であり、ともに塾生の二年間を過ごした。映画『棚の隅』(浅野有生子脚本)では江道信(えとうしん)という名で出演しており、撫子作品は今作で17年ぶり。 <主な作品>【ドラマ】『火の用心』(1990/日本テレビ)『代表取締役刑事』(1993/テレビ朝日)『恋愛キャリア活用社会』(1997/NHK/石井信之脚本)『時効』(2002/テレビ朝日)『つぐない』(2004/TBS)。【映画】『白痴』(1998/手塚眞監督)『月』(1999/君塚匠監督)『メタセコイヤの木の下で』(2004/櫻井眞紀監督)
1971年10月30日生まれ、熊本県人吉市出身。2003年にメンバー全員九州男児という異色の劇団『男魂(メンソウル)』を旗揚げ。以来、作・演出も担当しながら、 全28作品に出演。その確かな演技と作品には熱烈なファンも多く、男気のある役者として、舞台・映像問わず、精力的に活動している。今作の和尚役では、実際に光専寺の住職から袈裟を借り、経の読み方も習うなど、役者魂が光る演技を見せている。 <近年の主な作品>【舞台】『ヘンリー8世』(阿部寛主演/吉田鋼太郎演出)『フラガール』(羽原大介脚本/山田和也演出)『ワルシャワの鼻』(明石家さんま 主演 / 生瀬勝久脚本・水田伸夫 演出) 【ドラマ】暴太郎戦隊ドンブラザーズ(テレビ朝日)連続テレビ小説『エール』(NHK)大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)『ボイスⅡ』(日本テレビ)【映画】『ガチ星』(江口カン監督)『ピストルライターの打ち方』(眞田康平監督)『NORINTEN』(稲塚秀孝監督)
1967年10月8日生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知県立明和高校、金城学院大学短期大学部文科英文専攻卒。20歳で脚本家・倉本聰主宰の富良野塾へ。5期生として、北海道・富良野で脚本を学ぶ。 22歳から地元名古屋で放送作家としてテレビやラジオ番組を書き始め、のちに上京。朝日新聞の広告記事や雑誌などでライター経験を積んだ後、 30歳から脚本家(浅野有生子)としての活動を始める。ゴールデンデビュー作の月曜ミステリー『陰の季節』(横山秀夫原作/TBS)でATP賞、 放送文化基金賞などを受賞。脚本家(浅野有生子)の傍ら、放送作家(木庭有生子)、作詞家(木庭撫子)としても活動。 現在も、NHK・Eテレ『おかあさんといっしょ』、正月の『箱根駅伝』(日本テレビ)などの番組構成・ナレーション原稿を担当している。 2021年9月、熊本県山鹿市へ移住。2022年8月、オール山鹿ロケを敢行した映画『骨なし灯籠』が、初監督作品となる。 主な脚本作品は、月曜ミステリー『陰の季節』※シリーズ6作まで(TBS)土曜ドラマ『スロースタート』(NHK) 春のSPドラマ『天国へのカレンダー』(関西テレビ)『安宅家の人々』(東海テレビ)映画『棚の隅』(2006)※モントリオール世界映画祭正式出品
1958年8月2日生まれ、熊本県熊本市出身。済々黌高校、早稲田大学卒。テレビ朝日系の番組制作会社、名古屋テレビ放送を経て、TOKYO MX。ディレクター、プロデューサー、編成部長、事業局長などを経て、TOKYO MX執行役員。厳しい時代を迎えたテレビ局のコンテンツ開発、番組編成、営業、経営の一翼を担う。 2021年にTOKYO MXを退職し、故郷・熊本へ。山鹿市・豊前街道沿いにある父の実家であり、先祖代々が暮らしてきた築150年の古民家を再生して移住。先祖が明治時代に材木商をやっていた時の屋号「板屋」を復活させた。現在、国指定重要文化財の芝居小屋「八千代座」に勤務しながら、映画「骨なし灯籠」のプロデューサーを務める。映画公開に併せ、山鹿にミニシアターを創り、新たな文化発信、人的交流の拠点にしたいと計画中。
作曲家・ピアニスト。アメリカのバークリー音楽大学・映画音楽作曲学科を首席卒業。 熊本を拠点に、演奏家への楽曲提供や広告音楽・劇伴音楽を手がける。ソロ活動、活弁・アート・舞踏・朗読などとのコラボレーションを行なうほか、 2016年よりフィンランドを訪れ音楽を通じた文化交流を行うなど国内外で活動中。
→ホームページ
新箏(にいごと:21絃箏)ソリスト。邦楽創造集団オーラJ『伝説舞台 羽衣』、東京室内歌劇場『フォークオペラうたよみざる』の箏奏者として 文化庁巡回公演。国際的な活躍で箏の魅力を世界に発信している。アート伝統プロ代表、くまもと邦楽会館代表。
2003年6月4日生まれ。東京都調布市出身。洗足学園音楽大学(音楽・音響デザインコース)に通う現役の音大生で、今作の予告編音楽を担当したのは、大学一年生(19歳)のとき。物語に誘う30秒と1分半の音楽を見事に仕上げた。今後、映画やテレビドラマ、アニメーション、CMなど、映像作品全般の音楽制作を希望しており、その活躍が期待される。
1968年生まれ、長野県出身。独学で撮影技法を学び、kiroro、夏川りみなどの女性アーティストのPV、長崎ハウステンボスなどのCM、 石原さとみ、綾瀬はるか、香椎由宇などホリプロ所属の女優のイメージビデオを担当。『女性を美しく撮る』カメラマンとして定評があり、 撮影した本数は約150本にのぼる。 2011年に海外ロケを敢行したドキュメントドラマ『情熱!スペイン三都物語~フットボールの夢を追いかけて』(2011 / WOWOW × docomo)で、 木庭撫子監督(当時は脚本家・浅野有生子)と出会い、続編『Bonjour! Roland Garros~テニスとパリと二十歳の空』も担当。今作の熱烈なオファーを受けた。
1957年生まれ。熊本県菊池郡大津町出身。県立大津高校から横浜放送映画専門学院(現日本映画大学)へ。卒業後、RKK熊本放送関連の映像制作会社『ABC映画社』入社。テレビ局の取材、 PRフィルムの撮影などで7年間修行を積み、フリーに。 撮影カメラマンとして熊本で活躍する一方、福岡でフィルム撮影の助手として更に修行を積む。 96年、有限会社山野事務所として映像部門(スプロケッツ)とスタイリスト部門(妻は熊本でのスタイリストの草分け的な存在・山野蕗子)を立ち上げ、現在に至る。
1970年生まれ、鹿児島県鹿児島市桜島町出身。1990年K &amムービーズ入社。2000年よりフリーランスの照明技師として、おもに九州地区で活躍。 近年では、自身で撮影・編集も行うマルチな活動を展開している。CM『焼酎あらわざ』、鹿児島県阿久根市のPRムービー『アクネ!イイネ!トリップ』('22)など。
1962年生まれ、神奈川県横浜市出身。41年勤務したNHKでは、ドラマの照明を中心に活躍。定年退職した直後、今作の撮影に参加した。 現在は、日本の照明文化発展のために様々な活動を行っている。日本映画テレビ照明協会副会長。主な作品(NHK)は、大河ドラマ『功名が辻』『天地人』『軍師官兵衛』『おんな城主直虎』。連続テレビ小説『春よ来い』『瞳』『まれ』。『スパイの妻』(2020/黒沢清監督/ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞)ドラマ8K版と劇場映画版。そのほか、日本照明家協会賞 テレビ部門大賞・文部科学大臣賞受賞、日本映画テレビ照明協会ドラマ部門最優秀賞受賞など、数々の受賞歴がある。
水津聡まひろ玲希高山陽平
たむらもとこにしやうち良
知江崎ハルカ草野遥政木ゆか山本直人
杉本凌士
脚本・監督・編集:木庭撫子
プロデューサー:木庭民夫
音楽・演奏/ピアノ:志娥慶香演奏/箏:藤川いずみ
撮影:萩原章 山野道郎
照明:原田拓海照明アドバイザー:木村中哉
編集アドバイザー:石松義朗音響設計:尾方航カラリスト:黒石信淵
録音:野中拓也 西野隆博 石井良亮撮影助手:関谷優人 古家彰
制作:村川智美 西山ゆうこ 岩本穂 岡村学タイトル文字:市川雄大
予告編音楽:豊田小太郎スチール:上野弘喜
エンディング:山鹿中学校合唱部「おもいでのアルバム」
後援:山鹿市山鹿市教育委員会一般財団法人山鹿市地域振興公社
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