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Cast #1 水津聡, #2 まひろ玲希
2025.05.09東京公開がいよいよ迫り、カウントダウンしています。
公式Instagram、Facebookであげている、キャスト紹介をHPにも。
5月6日(火)
東京公開まで、あと10日
映画『骨なし灯籠』で、亡き妻の骨壺を提げながらさまよう主人公(市井祐介)を演じたのは、
富良野塾の後輩、水津聡(すいつさとし)。水津は首が長い。
倉本聰先生の芝居『歸國』で、彼は首に自死のロープをかけたまま靖国神社に棲みついた英霊を演じていた。その凄まじい演技に衝撃を受けながら、わたしは首のロープが苦しそうに見えないのが不思議だった。アクセサリーのように軽く身に纏い、悲壮感はなくむしろ自然で、彼に似合ってさえいた。似合うと観客に思わせる出で立ちは、役者にとってその役が同化したことを意味する。水津はまさに、その英霊と同化していた。『骨なし灯籠』のタイトルを思いついたとき、骨壺を首から提げた水津が浮かんだ。最愛の妻の骨壺を提げる、その行為自体を苦しく見せたくなかった。男にとって、亡き妻とともに歩くことは「日常」であり「安らぎ」なのだから。
だからこの映画の主人公は、さまよいながらもトボトボとは歩いていない。亡き妻と一緒に歩いている。哀しみは、彼女がいない日常そのものであるように。
美大卒で手先が器用な水津は、灯籠づくりのシーンも期待以上に演じてくれた。
主役で出ずっぱりだったのに、小道具の看板を描いたり、部屋の装飾も担ったり…美術スタッフもいない現場で何役もこなしてくれた。コロナ禍で資金も乏しく、少数精鋭で撮影に挑んだ映画『骨なし灯籠』は、すべての俳優スタッフの、持てる力を最大限に発揮した作品だ。
そして誰よりも、人一倍も二倍もスタッフとしても動いた俳優、水津聡の初主演映画。
彼がいたからこそ生まれたこの映画を、ぜひスクリーンで、全身で哀しみを表現する姿を見届けてほしい。
木庭撫子
5月9日(金)
映画『骨なし灯籠』で主人公の亡き妻と双子の妹、一人二役を演じた、まひろ玲希(たまき)。
彼女に出会ったのは25年ほど前になる。
朝ドラ『オードリー』でデビューしたばかりで、年はまだ25か6だった。わたしも脚本家としてデビューしたばかり。振り返れば長い年月が経ってしまったけれど、今もまひろはあの頃と変わらず、むしろ、よりいっそう綺麗になったと思う。物憂げな顔にはとくに、大人の女性の、品のいい色香が漂う。ちょうど今の朝ドラ『あんぱん』は彼女の生まれ育った高知が舞台だが、実際のまひろは「はちきん」そのものだ。きっぱりとして豪放磊落、酒豪でもある。
けれどわたしは、彼女にはいつも静かな、内に何かを秘めた役を演じてほしくなる。表で見せる顔ばかりがその人ではないし、誰しも色々な顔がある、何より彼女は「女優」。内なるものを表現してほしくなってしまう。
彼女の「ゆかり」「あかり」は、期待以上だった。
難しい二役を、せつなさを抱きながら演じるその姿に、撮りながら何度も胸がしめつけられた。
カットをかけるタイミングも、編集でも、余韻を消さないよう努めた。ここで細かく言及することは控えるけれども、女優まひろ玲希の儚い美しさを、わたしも最大限に引き出すことができたと自負している。メイクも衣装も、助監督さえ不在で、圧倒的にスタッフが足りないなか、真夏の暑い盛りに大変な苦労をさせてしまったけれど、出番のない日には率先して現場を手伝い仕切ってくれた。右下の写真は、私服で宴会シーンの酒を配っている素の「はちきん」まひろ玲希だ。
これまでまひろを知る人も初めての人も、彼女の秘めた美しさを感じて頂けると嬉しい。
木庭撫子
東京公開(第一弾。恵比寿ガーデンシネマ)まで、あと7日。
彼女の故郷、高知公開(6月20日初日/キネマM)まで、あと72日。