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映画『骨なし灯籠』最新情報

Cast #3高山陽平,#4たむらもとこ

2025.05.12

5月11日(日)

映画『骨なし灯籠』のキャスティングで、
役柄と本人がもっとも重なっているのは、
灯籠師見習い役の直樹。高山陽平だ。

山鹿出身の俳優がいると東京で紹介されたときの、第一印象を生かしたキャラクターで灯籠師見習い『直樹』を書いた。要するに「当て書き」である。

人懐っこい笑顔で、すっと相手の内に入っていく直樹は、飾らず素朴で、とにかくよく食べる。宴会のシーンの直樹は、おそらく素のまま消えもの(芝居用の食事。小道具だが役者が芝居しながら食べると無くなるから)を躊躇なくガンガン食べていた高山陽平そのものだ(写真はオフショットではなく本編のシーン🤭)。

高山陽平🟰直樹、は、当て書きしたのだからある意味当然で、そんな直樹にしたかったから食べっぷりの良いのは本望なのだけれど、じつはまったく思ってもいなかった「偶然の背景」が、彼と直樹にはあった。

物語の中盤。灯籠祭りの日に、直樹が主人公に亡き父のカメラで写真を撮ってほしいと頼むシーンがある。

「僕の父親も亡くなっていて、カメラが趣味だったんです」

撮影直前、高山君に打ち明けられたときの衝撃を、わたしはうまく言い表せない。たとえば、ついたはずの嘘が本当になってしまったような。
まさかそんな偶然が?何か見えない力が働いてわたしにそう書かせたのだろうか?

お父さんを亡くしたのは、高校3年の時だったという。彼自身はこの偶然を「縁」や「運命」のように感じてくれたようだった。「カメラもまだあるんですよ、ウチに」と少し興奮気味に。

映画に登場する直樹の亡き父のカメラは、高山君のお父さんの形見である。
こんな偶然があったのだから、高山君には、お父さんのカメラで演じて欲しかった。

早くに夫を亡くし、女手一つで働きながら子供たちを育てた高山君のお母さんは、熊本先行上映のときに何度も映画館に足を運んでくれた。延長されるたびに「次の休みにもまた観られるかしら」と、嬉しそうに。デートを楽しむように。

東京公開まで、あと5日。
今日は、母の日でもある。

木庭撫子

5月12日(月)

昨日の熊日新聞にも載っていたセリフ、
「春が苦手でしょう」

妻を亡くし山鹿に住み着いた男・市井に、灯籠師の友恵が語りかけた言葉である。
演じたのは、富良野塾の同期たむらもとこ。

彼女の芝居に生かされ、観客の心に届いたからこそ、記憶に残るセリフとなったのだろう。

実際、わたしはあのシーンを撮影していたとき、セリフが終わっても、しばらくカットをかけられなかった。撮りながらその芝居に胸を打たれ、余韻を静かに見守りたかった。
するとちょうど、茶屋の前の通りを車が過ぎ、夕暮れの光が店の壁に反射して、綺麗に2人を包んだ。友恵の市井に寄り添う気持ちが静かに浮かび上がる、とても美しいシーンとなった。

もとことは、富良野塾に入ってすぐ同じ部屋になった。彼女が19歳、わたしは20歳。喧嘩もたくさんしたし、恋愛や仕事の悩みもたくさん語り合った仲だ。

互いをよく知る相手で、甘えもあり、撮影中も何度か口論になったけれど、喧嘩ができる友人なんて、わたしには彼女ひとりしかいない。

撮影2ヶ月前。
灯籠師の役作りのために、もとこは山鹿に来てくれた。自費で、である。
坂本ゆかり灯籠師に灯籠づくりのレクチャーを受け、基本的な所作などを教えてもらっていた。小さな映画でも、役者としての仕事には決して手は抜かない。彼女の矜持と友情を感じた。

映画『骨なし灯籠』は、わたしと夫の二人三脚で作った作品だと紹介されることが多い。しかし役者やスタッフ、撮影のみならずその後も編集や音楽や、完成後もチラシやポスターを作ったり、そしてそのチラシを配ってくれたり。
たくさんの人たちの支えがあって、ここまで来た。ほんとうに感謝しかない。

そのなかで、誰より早く、一番最初に山鹿に来て、共に映画『骨なし灯籠』の、小さな舟に乗ってくれたもとこへ。

最高の『友恵』を、ありがとう。

東京公開まで、あと4日。

木庭撫子

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